今回は以前紹介しました南信州吉田地区の古民家群の話題です。
古民家群の中で中心的な役割をなすのが、
元造り酒屋のM邸です。
環境省の
「地球温暖化キャンペーン」として全国五紙の一面に掲載された
大変由緒正しき名家です。
過去のブログ-①過去のブログ-②赤レンガの煙突と共に、
地域のシンボル的な住まいとして
愛されてきました。

やはり230年の経過からくる
(これ自体驚異的な年代)劣化が見られ
正面を改修しようという話になりました。



出庇の腰板部、出床の土台部、酒造りを表す「酒林」とも、
風化が
進んでいます。


出庇は
栗材にて葺き替え、出床土台もコンクリート打のうえ
栗土台にて
補強しました。

風化した屋根は
桧皮葺の上に杮葺と、現況に合わせ復元しました。
棟木は新たに加工したものです。

クリーニングにより
見事に蘇った「酒林」この「酒林」は
明治16年(1833)に坂田亀吉によって、屋根と台座が造られた
と言い伝えられています。
坂田亀吉は木曽(旧三尾村)に生まれ宮大工に励み、
建築・彫刻面に優れた技量を発揮しました。


「酒林」を飾っている一回り
大きな唐派風の屋根、杉玉を載せている見事な
丸彫の光っている台座、唐派風の曲線を創り出している
二軒の美しさに心を打たれます。
「兎の毛通し」の
鶴が舞い、桁を繋ぐ虹梁には
唐草模様が彫られ、その上に逞しい
大きな
松が枝を張り、極めて精巧な透かし彫です。


台座の三面を飾っている
海の波と泳ぐ亀の群像が賑やかに踊っている姿は
繁盛の喜びまで叫んでいるようです。
台座を支える組み物もしっかり柱に固定され、
見事な祈りの彫刻です。