築230年 造り酒屋のファサード改修

今回は以前紹介しました南信州吉田地区の古民家群の話題です。

古民家群の中で中心的な役割をなすのが、元造り酒屋のM邸です。
環境省の「地球温暖化キャンペーン」として全国五紙の一面に掲載された
大変由緒正しき名家です。

過去のブログ-①

過去のブログ-②

赤レンガの煙突と共に、地域のシンボル的な住まいとして
愛されてきました。
006_convert_20221025141257.jpg

やはり230年の経過からくる(これ自体驚異的な年代)劣化が見られ
正面を改修しようという話になりました。




DSCN1666_convert_20221025140336.jpg



DSCN1333_convert_20221025140054.jpg

DSCN1334_-_コピー_convert_20221025140122

出庇の腰板部、出床の土台部、酒造りを表す「酒林」とも、風化が
進んでいます。




DSC_0037_convert_20221025140010.jpg


DSC_0002_convert_20221025140453.jpg



DSC_0028_convert_20221025140743.jpg

出庇は栗材にて葺き替え、出床土台もコンクリート打のうえ栗土台にて
補強しました。




DSC_0002_convert_20221025143642.jpg

風化した屋根は桧皮葺の上に杮葺と、現況に合わせ復元しました。
棟木は新たに加工したものです。




DSC_0013_convert_20221025140527.jpg

クリーニングにより見事に蘇った「酒林」
この「酒林」は明治16年(1833)に坂田亀吉によって、屋根と台座が造られた
と言い伝えられています。

坂田亀吉は木曽(旧三尾村)に生まれ宮大工に励み、建築・彫刻面に優れた
技量を発揮しました。

20221026105407_00001_convert_20221026110950.jpg



DSC_0016_convert_20221025140618.jpg

「酒林」を飾っている一回り大きな唐派風の屋根、杉玉を載せている見事な丸彫の
光っている台座、唐派風の曲線を創り出している二軒の美しさに心を打たれます。

「兎の毛通し」の鶴が舞い、桁を繋ぐ虹梁には唐草模様が彫られ、その上に逞しい
大きな松が枝を張り、極めて精巧な透かし彫です。


DSC_0017_convert_20221026173720.jpg




DSC_0020_convert_20221025140701.jpg

台座の三面を飾っている海の波と泳ぐ亀の群像が賑やかに踊っている姿は
繁盛の喜びまで叫んでいるようです。
台座を支える組み物もしっかり柱に固定され、見事な祈りの彫刻です。